- 2023年8月30日
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歴史ノンフィクション小説 その後の芳一 【第19話】
平家の亡者が都に現れるようになってから亡者達がそのまま居着いてしまった為、人々は都には住めなくなりほとんどの者が逃亡していった。逆に逃げ遅れた人々は平家の亡者たちに支配され洗脳されてしまっている。京の都は南以外の三方を連なった山々に囲まれていたが、都に跋扈する亡者たちはその周辺の山々ですら寄り付こ […]
平家の亡者が都に現れるようになってから亡者達がそのまま居着いてしまった為、人々は都には住めなくなりほとんどの者が逃亡していった。逆に逃げ遅れた人々は平家の亡者たちに支配され洗脳されてしまっている。京の都は南以外の三方を連なった山々に囲まれていたが、都に跋扈する亡者たちはその周辺の山々ですら寄り付こ […]
巨大な平家蟹に挟まれた芳一を誇らしげに見ていた知盛は、芳一を放すよう敦盛に命じた。敦盛が笛を吹くのをやめた途端、蟹のハサミから芳一の身体がすり抜け(ドサッ)と音を立てて船の上に落ちた。芳一は船の上で横たわりピクリともしなかったが、念のため芳一を動けないように縛りつけろ、と入江丹蔵に命じた。即座に手 […]
海上はどんよりとした雲が広がり南からの風が強く波が荒れ、芳一を載せた船は右に左に大きく揺れながら湊に向かっていた。船は主に物資運搬の小型の海運船で荷に混じって数人の乗客が乗っていた。船が揺れるため、船員以外立っている者は誰もいなかったが、ふいに芳一が立上り暫くの間ジッと前方を向いたまま動かずにいた […]
「申し上げます。建礼門院様よりお達しがあります」 「ん?徳子のお達しだと・・・何だ、申せ!」 「知盛殿には至急、尾張国熱田に向かわれよ、との事です」 知盛は都近くの温泉に浸かっていた。 「ここの温泉も飽きたな。おい、熱田の辺りには、いい温泉があるのか?」 「はっ?さあ、存じません」 「調べておけよ […]
数日後、維盛は六波羅殿にいた。ここは、かつて六波羅館と呼ばれ、平氏の権勢が最盛期の頃に平氏の拠点になっていた場所で、3千以上の邸宅が立ち並ぶ平氏一門の居住地域でもあった。1183年平氏が都落ちする際に六波羅館は焼き払われ、平氏滅亡後は幕府方の京都守護の拠点として活用されていた。 滅亡後、再び平氏 […]
「奴の足を動けなくしている。今のうちに仕留めろ!」 維盛の背後には藤原忠清が立っていた。土手から動かず維盛と芳一の攻防を眺めていたが、苦戦する維盛を見るに見かねて加勢しに来ていた。藤原忠清は石や木など周囲にあるものを、他のものに変化させる力を持っていて、河原の石をトリモチのようにして芳一の足に貼り […]
亡者の妖力は個々によって差があり、頂点に近い者ほど強い妖力を持ち、妖力の強さは怨念の強さに比例している。またその妖力の種類は一様ではない。しかし、戦死した者と病死した者では怨念の強さが違い、前者の方が遥かに強力であった。平清盛は治承5年(1181年)に病死している。現世で形成されていた平家一門にお […]
翁の反応がないことに異常さを感じ、小金吾は手をかざし軽い念力で翁を刺激した。小金吾が放った念力は微弱であるにも関わらず、翁の身体は風船のように大きく揺れ、ゆっくりと回転し始めた途端「ボッ」と音を立て煙となって消えてしまった。消滅する寸前に喉に扇子が突き刺さっている翁の哀れな姿を見た小金吾は茫然とし […]
芳一は座ったまま読経を続けていた。背後から維盛の手下達がグングン迫っている状況にまるで気づいていないかのように。 小金吾は大きな釣針のような鈎《かぎ》を右手に持ち、その鈎を結付けている紐を左手に持って芳一に向かって突進していていたが、標的まであと10m程度の地点で自らは立ち止まり、他の者達に突っ […]
富士川の河原には大小さまざまな石が無数に転がっていて、川の流れに洗われたせいか皆同じ様に丸く、同じ様に淡い灰褐色をしている。河原の土手沿いは歩くのが困難なほど草木が生い茂り鬱蒼としている。しかし、土手から川の間の平たい部分には限られた種類の草が散在して生えているが、ほとんど木は生えていない。低木が […]